オイスターソースのお話

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更新日:
 2013年9月2日


◎オイスターソース(Oyster Sauce)(2013年9月2日)
 オイスターソースは、広東料理でよく使われる牡蠣を主原料とする調味料の1つです。日本語では牡蠣油ともいいます。カキを塩茹でした際に出る煮汁を加熱濃縮し、小麦粉、澱粉で濃度を調整し、砂糖、旨み調味料などを加えて調味し、アミノカラメルで色を調整したものが販売されています。メーカーによって、風味や粘度に大幅に異なります。
 独特の風味とアミノ酸、核酸の旨味、コクを持ち、広東料理をはじめとする中華料理に広く用いられています。特に炒め物や煮込み料理に利用されています。
 その昔、アジアの片隅に「蠔鏡(ほうけん)」と呼ばれる街がありました。現地の言葉で「蠔」は牡蠣、「鏡」は日本語と同じく鏡を意味しています。栄養豊富な牡蠣がふんだんに採れるこの街は、殻の内側がまるで鏡のようにキラキラと輝いて見えたことから、そう呼ばれていたのだそうです。
 その街の現在の呼び名は「マカオ」です。4世紀半にわたるポルトガルの居留地、統治時代を経て、1999年に中国に返還された小さな街で、香港の西南西約60kmにあります。今、牡蠣の殻に代わってこの街を輝かせているのは、豪華なカジノや5つ星ホテルのネオン、そして街中に点在する美しい世界遺産です。
 かつては鏡のように輝いていた牡蠣の産地も、大規模開発ですっかり様変わりしてしまいましたが、ホウケン時代の確実な証として残っているのが、牡蠣の煮汁をベースにした調味料、オイスターソースです。この、中華圏では定番の調味料のルーツが、このマカオの港町にあります。
 マカオきっての繁華街、セナド広場からメイン通りの新馬路(サンマーロウ)を10分ほど歩くと、古い港町に行き着きます。ここには乾物店や地元の海鮮料理店が並んでいます。
 そんな下町にある小さな調味料店「李錦記(レイカンケイ)」の創始者こそ、オイスターソースの発明者です。「李錦記」は、現在では、香港に本社を置く中華調味料メーカーの最大手で、マカオにあるのは、その1号店です。
 オイスターソースが生まれたのは1888年です。広東省の小さな村で小さな食堂を営んでいた李錦裳(レイカンソン)は、ある日、常連客からたくさんの牡蠣を御土産にもらったそうです。塩茹でにして食べようとして鍋に仕込んだものの、あまりの忙しさに、茹でた牡蠣を鍋に入れたまま、一晩、おいてしまったそうです。翌日、鍋の蓋を開けてみると、何と、良い香りのする汁ができていたのだそうです。そこで、舐めてみると、香ばしかったそうです。そこで、これを何とか料理に応用できないかと試行錯誤の末に完成したのがオイスターソースの原型だそうです。
 1902年、李錦裳は店を広東省に隣接する、牡蠣の大産地であったマカオに移し、本格的にオイスターソース作りをスタートさせました。
 販売を始めたところ、料理に深みを与える便利なソースは大ヒットし、マカオから香港、さらに中国本土に普及し、広東料理にはなくてはならない調味料になっていったそうです。
 その後、店は販路を拡大すべく香港に拠点を移し、製品はアジアの大工場で生産されるようになりました。現在、上記の1号店で売られているのも、工場製です。
 現在のマカオでオイスターソースを作り続けているのは、唯一、「榮甡蠔油庄(ウェンサンホウヤウチョン)」だけです。榮甡蠔油庄の創業は李錦記がマカオで店舗を開いた年と同じ、1902年です。マカオ育ちの人なら、誰でも知っている有名店です。マカオに暮らしたことがある孫文も、この店のオイスターソースを愛用していたようです。
 蠔水(ホウソイ)を加熱しながら濃縮させ、砂糖や醤油、澱粉などを加えて調味すると、オイスターソースが完成します。非常に単純な工程ですが、根気がいる作業です。蠔水とは、生ガキを茹でた時に出る煮汁のことで、いわば、オイスターソースの種のようなものです。榮甡蠔油庄でも、現在は、自家製の蠔水ではなく、広東省から仕入れています。昔は、マカオに多くの牡蠣の養殖場があり、そこで収穫した大量の牡蠣を使って、自家製の蠔水を作っていたそうです。
 窯に蠔水を入れ、薪をくべて加熱しながら、ボートのオールのような道具で何度も窯の中の汁をかき回します。そうしないと、煮詰まって窯の底にこびりついてしまうからなのです。しかし、これが非常に単純ではあるものの大変な作業です。なんと、完成するのは10時間後です。そして、ソースが冷めたら、お玉とじょうごを使って、1本ずつ、瓶に詰めて完成です。
 マカオの広東料理店には、炒め料理に煮込み料理とオイスターソースをメインに使ったメニューが豊富にあるますし、庶民的な麺粥店でも、麺や茹で野菜にオイスターソースをかけて食べるのが定番になっています。
 マカオは牡蠣を使った食文化が根付いた街です。オイスターソースだけでなく、ドライオイスターも良く使います。干した牡蠣を茹でて戻し、スープのダシや、料理の食材として利用しています。干した牡蠣は、広東語で「蠔豉(ホウシー)」と言うが、「好市」という景気が良くなるという意味の単語と同じ発音のため、縁起物としても担がれているそうです。