無洗米のお話

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更新日:
 2001年2月27日


◎無洗米(2001年2月24日、朝日新聞)
 とぐ手間をかけずに、ご飯が炊ける「無洗米」の話題が広がっています。「冷たい水に手をつけなくていいから助かる」という主婦からの支持が大きいようです。まだまだ普及度は低いなか、昨秋、一部の米卸業者や精米機メーカーなどが、業界団体を設立し、テレビCMなどの宣伝に力を入れ始めました。その結果、認知度が急上昇し、関係者は「ブレイクの兆し」と大きな期待を寄せています。
 あらかじめ、米のぬかを取り除いた無洗米はどれほど浸透しているのか。食糧庁は、昨年の国内のコメ販売量約900万トンのうち、12~13万トンが無洗米とみる。首都圏の大手コメ卸業者などによって2000年10月に設立された全国無洗米協会(52社)によると、1999年が10万トンだったのに対し、昨年は15~17万トンに増えたという。いずれにせよ、コメ販売の全体の1%程度だ。
 同協会は2000年11月末以降、タレントの山口もえさんを登場させ、「お水が冷たくてお米、洗えそうにない」などと言わせるテレビCMをスタートさせ、今後2年間で十数億円を投じる本格的なキャンペーンに乗り出した。2001年1月下旬、協会のホームページなどを通じて女性対象のアンケートを実施したところ、1割強が「自宅で無洗米を使っている」と回答。キャンペーン前の調査では4%程度だったので、CM効果で一気に「認知度」が上がったとみる。
 無洗米協会は今年の販売予測を、CM放映前の倍増の50万トンと上方修正した。来年は100万トンと「倍々ゲーム」の強気見通しだ。若い女性層だけでなく、主婦を中心とした40歳代以上にも広がりが見受けられることなどから、手ごたえを感じているためだ。「主食を変える、というのは簡単なことではないが、面白いビジネスになってきた」と、岸永三専務理事はほくそ笑む。
 いま人気がある無洗米の主流は、東洋精米機製作所(本社・和歌山市)が1991年に開発した製法によるものだ。この製法では、白米の表面の凹凸に残りがちなぬかを、水を使わずに、粘り気の強いぬかで引きはがす加工をする、という。
 もともと、従来のコメのとぎ汁が生活排水として河川や海を汚している現状を変えたい、というのが開発意図にあった。ぬかでぬかをとるというユニーク製法は、とぎ汁自体を、精米の過程でも、料理でも出さずにすむというものだ。さらに精米工程で出たぬかは、肥料として市販される仕組みだ。
 東洋精米機製作所はこの製造機を全国のコメ卸業者の精米工場にリースし、管理も一手に引き受けている。この工程には、卸業者も入れず、東洋側も、加工の詳しいやり方を明らかにしてないため、関係者の間では「ブラックボックス」とも呼ばれている。
 東洋は、この製法以前に、水洗いによる無洗米製造機を開発していた。結局、商品化には至らなかったが、ライバルメーカーが同様な機械を開発したことから、東洋側は「技術盗用された」などとして訴え、その係争はいまも続いているという。そうした経験があるため、新たな製法の秘密保持には、ことのほか気をつかい、それが「ブラックボックス」にもつながっているようだ。
 大手スーパーの無洗米販売が本格化してきた。ユニークな精米法を編み出した東洋にとっては「苦節十年」を経て、ようやく成果が現れ始めた、といえる。スーパー側も、ヒット商品に育てたいという思惑の一方で、「販路が拡大するにつれ、その製法の内実を知りたい、という消費者が増えるのは間違いない。実際、一部の店には問い合わせがすでに来ているが、きちんと説明し切れていない。それが今後の成長の妨げにならなければいいが⋯⋯」(イトーヨーカ堂)という悩みも出ている。