きしめんのお話

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更新日:
 2008年9月18日


◎きしめん(2008年9月18日)
 名古屋と言えば、きしめんですね。きしめんというのは、他の地域では、あまり聞かない麺料理だと思います。何故、名古屋はきし麺なのでしょうか。ちなみに“きしめん”は、漢字で「碁手麺」または「棊子麺」と書くそうです。この「碁子」、「棊子」は、いずれも、囲碁で使う碁石のことです。何故、平たい麺の「きしめん」に円盤状の碁石の字を当てるのか、大きな謎となっています。このきしめんの由来には、諸説あるようですが、有名な4説が、以下のものです。

1)雉麺説
 江戸時代、尾張の国の武平町に大久保将監と言う広大な武家屋敷があったそうです。その大久保邸に藩主が来た際、「田舎うどん」に雉の肉を煮込んで献上したところ、非常に美味しいとの評価を得て、有名になったそうです。この「雉麺」が後に転化して、「きしめん」になったという説。

2)紀州麺説
 紀州藩の殿様が尾張藩の殿様にお土産で持ってきた麺類を「紀州麺」と呼んでいて、それが変化して「きしめん」になったという説。

3)上記1)と2)の合体した説
 東海道芋川、地鯉鮒(ちりゅう:現在の知立)あたりに昔から「名物ひらうどん」というものがありました。江戸初期の頃、名古屋武平町(ぶへいちょう)の岡田将監の屋敷や名古屋山(今の県庁、市役所辺り)に雉が沢山生息しており、その雉の肉をひらうどんに煮込んで尾張藩主に献じたところ、非常に喜ばれました。
 御三家の一家でる紀州候が名古屋滞在の折は、いつもこの雉肉のひらうどんを賞味されていました。これが町のうどん屋で大評判をとり、近在はもちろん江戸にまで、「名代きじめん」、「きしゅうめん」の名が喧伝され、後に「きしめん」になったと言う説です。

4)棊子麺説
 もともと中国には、碁石に似た丸い団子のような麺で、「棊子麺」と呼ばれる料理があったそうです。これは、水で練った小麦粉を薄く延ばし、輪切りにした竹筒を押し付けて、丸く抜いていきます。それを茹でて、きな粉のようなものを振りかけて食べたのだそうです。このことは、18世紀後半に記された『貞丈雑記』に記載されているようです。
 そして、現在のきし麺も、もともとは丸い碁石の様な姿をしており、きな粉の様なものを振り掛けて食べていたのだそうです。これが、後に平たくて細長い麺の形となったものの、棊子麺という名前は、そのまま残ったのだとする説です。

 また、尾張あたりで「平打ちうどん」が作られるようになったのには、徳川家康が関係している、という話もあります。1610年に徳川家康が名古屋城を築城する際、多くの人足達に食べさせるために「平打ちうどん」を考案したのだそうです。通常の太いうどんを薄く平らにする事で、茹で時間の短縮を図れます。築城の際の大勢の人足に配る際、食事を作る時間を短縮させ、効率を図ったのだそうです。

 私は、少なくとも、1)、2)、3)は、説として無理があると思います。これらの説では、「棊子麺」という漢字があてられていることを説明できません。「きしめん」を少しでも高級な料理に見せたいがために、強引に理由を作っているとしか思えません。「きしめん」という言葉をもとに、後から(最近になって?)考えだされたとしか思えません。漢字が「棊子麺」である以上、この理由を説明できない説には賛同できません。したがって4)が近いように思えますが、この説明では、なぜ、丸い形状が細長く、しかも薄く(普通のうどんとは異なる形状に)なったのかを説明できていません。
 私の勝手な想像では、どこかで混同があったのではないかと思います。すなわち、もともとこの地域に「棊子麺」という丸い麺(?)の料理があり、ある程度有名だったのではないかと思います。その後、「平打ちうどん」が生まれ、これも有名になったのではないでしょうか。しかし、この「平打ちうどん」が広まる過程で、適当な名称がなかったために、丸い形状の「棊子麺」と混同されたのではないでしょうか。最終的に、作り易さから、「平打ちうどん」の方が広まり易く、その結果、「平打ちうどん」が「棊子麺」として広まっていったのではないでしょうか。
 「きし麺」は、普通のうどんと同じように小麦粉、塩、水が原料ですが、通常よりも塩の量が多いのが特徴です。これは、平たい麺は茹でた後、伸びやすいのでコシを強く、短時間では伸びにくくするために塩分量を増やしたのだそうです。しかし、塩分の多い生地は弾力がありすぎて、捏ねる、伸ばすなどの作業が困難となります。このため最近では、必ずしも塩分の多い麺ばかりではないようです。この場合は、うどんよりも早く伸びてしまいますので、作られたら、時間をおかずにいただくことが必要になります。
 名古屋在住の知人の話では、新幹線の駅のホームにある立ち食いきし麺屋のきし麺が一番、美味しいのだそうです。私は、残念ながら、そこで食べた経験がありませんので、本当かどうかは分かりません。私が、名古屋出張の際は「宮きしめん」をお土産として購入しています。スープも美味しく、なかなか気に入っています。