寒天のお話

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更新日:
 2013年6月2日


◎寒天(2013年6月2日)
 寒天とは、テングサ、オゴノリなどの海藻の煮汁を凍結、乾燥させた食品です。煮溶かしてゼリー状とし、蜜豆、水羊羹などの菓子の材料として利用されています。トコロテンは中国から製法を学び、作り始めたものですが、寒天は日本のオリジナルです。
 江戸時代初期の正保~万治の頃(1644年~1661年)、現在の京都市伏見で旅籠「美濃屋」を営んでいた美濃屋太郎左衛門が発見したと伝えられています。たまたま、真冬にトコロテンを戸外に置き忘れたところ、夜間の厳しい寒さで凍っていたのを見て思いついたそうです。夜には凍り、日中には溶けて水分が抜け、また凍っては溶け、これをくり返すうちに、トコロテンより白く、海藻の臭いも消えて美味しくなったトコロテンができたそうです。そこで、「瓊脂(トコロテン)の干物」と名付けて売り出したところ、評判になったそうです。
 これを黄檗宗の開祖、隠元禅師に献上したところ、精進料理の食材として活用できると喜ばれ、「寒晒心太(かんざらしところてん)」の意味を込めて、「寒天」と命名したそうです。
 その後、大阪の宮田半兵衛が製法を改良し、寒天を広めたそうです。さらに天保年間(1830年~1843年)に信州の行商人、小林粂左衛門が、寒さが厳しく空気の乾いている諏訪地方の農家の副業として寒天作りを広めたところ、角寒天というユニークな形態で、この地に定着したそうです。
 1881年(明治14年)には、ロベルト・コッホが寒天培地による細菌培養法を開発したため、寒天の国際的需要が増えました。このため、第二次大戦前は寒天が日本の重要な輸出品になっていましたが、第二次世界大戦中は戦略的意味合いから輸出を禁止しました。
 寒天の供給を絶たれた諸外国は自力による寒天製造を試み、自然に頼らない工業的な寒天製造法を模索しました。その結果、原料となる紅藻類を発見し、冷凍庫を利用して粉末状の新しい寒天を生産することに成功しました。こうして作られたのが粉末寒天です。
 第二次大戦後には日本でも工業的な製造法の研究が始まりました。1960年(昭和35年)頃には、オゴノリという紅藻類を使用し、凍結せずに圧力脱水する新しい製法が発見されました。1970年(昭和45年)頃には製造会社が35社にまで達しました。しかし、コストや需要などの問題で、2004年(平成16年)頃には5社ほどにまで激減してしまいました。現在、日本以外では、モロッコ、ポルトガル、スペイン、チリやアルゼンチンで寒天が製造されています。
 寒天は、そのほとんどが食物繊維で、100g中80.9gを食物繊維が占めています。これは、あらゆる食品の中で最も多く食物繊維を含んでいます。寒天に緩下作用、整腸作用があることは、ある程度知られていましたが、食物繊維が注目され、その研究が進むにつれて寒天の効用が他にも明らかになってきました。
 その1つが血圧を下げることです。食物繊維が、血圧の上昇を抑えたというデータは、動物実験でも人間に対するものでも幾つか出ています。この結果、食物繊維は腸内で脂肪吸収を妨害し、いっしょに排泄するからだろうと考えられています。
 また、コレステロールを低下させることも明らかになっています。動脈硬化を進行させる最大の因子は、血液中のコレステロール量の増加です。その予防のためには、善玉コレステロールが増え、悪玉が減ることが理想的とされています。
 「寒天」などの水溶性多糖類は、悪玉コレステロールを減らし、善玉の降下を抑制する効果のあることが分かっています。水溶性多糖類は、腸内でねばねばした状態になるので、胆汁酸が腸壁まで到達することを妨害します。胆汁酸は脂質の消化を助ける主成分なのですが、使われても腸壁から吸収され、肝臓でリサイクルされます。しかし、水溶性多糖類が吸収を妨害していますので、胆汁酸は肝臓で作らなければなりません。その胆汁酸の原料はコレステロールなのです。つまり、新しい胆汁酸を合成するためには体内のコレステロールを利用するため、体内のコレステロールが、それだけ少なくなるというわけです。
 また、大腸ガンを予防する効果もあると言われています。日本人の死亡原因のトップはガンで、中でも大腸ガンが増えてきています。この原因の1つに、欧米型の食生活があると考えられます。欧米型の食事を続けると便の量が少なくなり、しかも大腸内に長く滞留するようになるからです。もし、大腸内で発ガン物質やそれを助ける物質が出来た場合、それを吸収する時間も長くなります。また、動物性蛋白質や脂肪を多くとると発ガン物質やそれを助ける物質が出来やすくなるという結果も出ています。
 腸内に食物繊維がたくさんあると、発ガン物質が吸着排泄されるので、大腸はその作用を受けにくくなります。しかも食物繊維は胃の中で水分を吸い、カサを増やすので発ガン物質が希釈され、大腸壁にふれる率も低くなります。
 また、腸内菌がガンの予防や発生に関わりがあると言われますが、食物繊維はこの腸内菌、特に善玉ビフィズス菌を増殖しやすくする働きもあります。ビフィズス菌は、腸内で悪玉菌の増殖を抑えたり、有害物が吸収されるのを防いでくれます。
 さらに血糖値を下げる効果もあると言われています。食物繊維を多くとるようにすると、胃がその内容物を腸へ送りだすスピードが遅くなります。そのため、腸壁からの糖質吸収にも時間がかかり血糖値の上昇も緩やかになるわけです。
 糖尿病はインシュリンの分泌障害によって食物としてとり入れた糖質の体内利用がうまくいかず血糖値が異常に高くなる病気です。食物繊維が血糖値の上昇を抑えていますので、インシュリンの分泌が少ない人でも充分糖質を分解させることができるわけです。

・テングサ