チョレギサラダのお話

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更新日:
 2012年10月30日


◎チョレギサラダ(2012年9月20日)
 日本の焼肉料理店や居酒屋のメニューには「チョレギサラダ」というものがあります。どこのお店でもあるので、一般的な料理名だと思っていましたが、どうやら怪しげな料理のようです。焼肉料理屋さんにあるので、「焼肉=韓国」という図式、また「チョレギ」というカタカナ表記の雰囲気から、勝手に「韓国の料理」と思い込んでいましたが、そんな料理は韓国にはないようです。
 自分から注文することもなかったので、あまり気にしていなかったのですが、先日、韓国人の友人と居酒屋に行った時、メニューに「チョレギサラダ」というものがありました。それを見た韓国人の友人が「これは、何語ですか?」と聞いてきたのです。彼曰く、「カタカナ表記なので日本の料理ではないと思っていたのですが、韓国語ではないので、何の料理かと思って疑問でした。」と言うのです。
 そういえば、私も、ここ10年ほど、韓国との取り引きがあり、韓国に滞在したり、出張したりしていましたが、韓国内で「チョレギ」という言葉は聞いたことがありませんでした。また、韓国で焼肉屋さんに言っても、「チョレギ」という料理を見たことはありませんでした。
 ネットで調べてみると、どうやら「チョレギサラダ」という名称は、焼肉のタレでお馴染みの「エバラ食品工業株式会社」が生み出したようです。2001年~2002年頃、エバラさんが「焼き肉屋さんのチョレギサラダ」という商品名のサラダ用ドレッシングを販売していたそうです。この時、ホームページで「チョレギとは『ちぎった生野菜のサラダ』を意味します。」と説明されていたようです。このため、生野菜のサラダに韓国風のちょっとピリ辛なドレッシングをかけたものが、「チョレギサラダ」として広まっていったようです。
 件の韓国人の友人によると、「『チョレギ』ではなく、『ちょりぎ(절이기)』ではないか?」とのことでした。韓国語で「ちょりぎ」とは「漬けること」の意味だそうです。すなわち、「漬物のサラダではないか」、と言うのです。
 どうやらエバラ食品では、何故、ちぎった生野菜のサラダがチョレギなのか、また、チョレギの語源は何なのか、ということに対して説明をしていないようです。単に語感から適当に作った造語であるのかもしれません。
 ちなみにネットでは、八田靖史氏の「コリアうめーや!!」というメールマガジンのバックナンバー、第18号(2001年12月1日発行)に記載された情報をもとにした二次情報が多いようです。八田氏によると、2001年9月4日の毎日新聞の夕刊に「チョレギ」に関する記事が載ったようです。その記事によると、毎日新聞の記者が調べた結果、滋賀県立大学の鄭大聲教授から「チョレギとは慶尚道の方言で、標準語では『コッチョリ(겉절이)』です。」という回答を得たそうです。また、慶尚道から来た留学生に聞いたところ、「チョレギ。うん、それはコッチョリのことだ。慶尚道にはネギのチョレギとかもあって非常にうまいぞ。」との回答を得て、「チョレギとは慶尚道の方言で、韓国語でコッチョリのこと」との結論に至ったようです。
 ここで、「コッチョリ」の「コッ(겉)」は、「外側。表面」の意味で、「チョリ(절이)」は「漬ける」という意味です。すなわち「コッチョリ」とは、「外側(表面)だけを漬ける」という意味で、「浅漬け」を意味しているそうです。いろいろなコッチョリがあるそうですが、一般的には浅漬けキムチを指すことが多いようです。
 ただ、私としては、この「チョレギ=コッチョリ」という説は、疑問に思います。もともとが、エバラ食品の「チョレギサラダ用ドレッシング」だとすると、エバラさんが説明している「チョレギとは『ちぎった生野菜のサラダ』を意味します。」と「浅漬け」とは、全然、つながりません。また、「浅漬けサラダ用ドレッシング」というのは、明らかに可笑しいと思います。同様に、「チョリギ(漬ける)」の意味だとするのも合わないような気がします。
 もしかしたら、エバラ食品の当時の担当者は、間違った情報を仕入れてしまったのでしょうか。当時は、「チョレギサラダ=ちぎった生野菜のサラダ」と聞いて商品を売り出したものの、後から、そんな言葉はない(あるいは、「チョレギ=コッチョリ=浅漬け」と知って、それまでの説明が間違っていることを認識した?)と知って、そのような嘘の情報を流布した黒歴史を忘れようとしているのでしょうか?
 もちろん食品や、調味料などは、売上の変化も激しいと思いますし、毎年、新しい商品開発がされているのだろうと思いますが、2012年9月現在、エバラ食品工業さんでは、「チョレギサラダ用ドレッシング」は製造していないようです。これとは別に、「浅漬けの素」という商品が販売されていて、ホームページでは『浅漬けの素を使えば「きざんで、つけて、もむだけで」簡単に漬物のできあがり。旬の野菜をおいしく召し上がれます。』と説明されていますが、「チョレギ」に関する情報は一切、ありませんでした。
 現在の日本の焼肉屋さんや居酒屋さんで目にする「チョレギサラダ」という有名なメニューの発案者であれば、例え商品がなくなっても、自慢して良いと思うのですが、そんな気配はありません。なんとなく、エバラさんが間違った情報を流布させて、その事実から目を背けようとしている一方、広まってしまった「チョレギ」という言葉が独り歩きして、「韓国語っぽい響き」から、強引に、似ている言葉を語源だと誤解してしまっているような気がします。
 いずれにしても、「チョレギ」と言う言葉を日本中に広く知らしめたのがエバラ食品工業さんであれば、この語源や、ネーミングの由来などを説明してくれたら、と思うのですが、いかがでしょうか。エバラ食品さんの説明がない限り、真実は闇の中、という気がします。