東松山市のやきとり(やきとん)

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更新日:
 2019年10月27日


◎東松山市のやきとり(2006年3月30日)
 埼玉県東松山市には多くの「やきとり」のお店があります。通常、「焼き鳥」と聞くと鶏肉を串焼きにして塩や甘いタレをつけた料理を指しますが、東松山市の「やきとり」は、「豚のカシラ肉(顔や、ほほの肉)」を炭火で丹念に焼きあげ、ピリ辛の味噌ダレをつけて食べる料理です。「焼き鳥」ではなく、「焼きとん」です。
 「豚のカシラ肉」とは、「豚のほほとこめかみの部分」の肉です。1頭に約1.5kgほどあり、余分な脂身をとると約1.2kgになります。有限会社大野畜産商事(本社、東松山市)という精肉卸の会社では初代の大野丑造氏が昭和30年代より精肉卸業を営み、2006年3月当時、1日約120kg、約100頭分のカシラ肉を東松山市内、約40のやきとり店に販売していたそうです。現在、やきとり店は、東武東上線東松山駅を中心に約50軒のお店がひしめいているそうです。
 東松山市のやきとりは、昭和30年代に始まったそうです。昭和20年代、東松山駅の周りは、まだ桑畑が広がっていたそうですが、戦後の経済成長とともに駅の乗降客が増え、リヤカー式の屋台が出てきたそうです。当時は、食糧難の時代であり、屋台のメニューとしてホルモン(内臓等)が食べられていたそうです。ただ、当時のホルモンは、あまり人気にならなかったそうです。
 そんな中、寄居町にあった「大松屋(おおまつや)」の現店主、黒瀬タツ子さんのご主人が新しい料理を作りました。韓国人のご主人は、1956年(昭和31年)に寄居町でホルモン焼きの屋台を開き、白もつ焼きを売っていました。この時は、甘い醤油ダレを使っていたそうです。その後、肉を「白もつ」から「カシラ肉」に切り替え、タレも故国の辛子味噌を使うことを考えついたそうです。豚のカシラ肉もホルモン同様、当時、あまり食べられていなかったため、安かったようです。大松屋の「やきとり(やきとん)」は、味噌だれとセットで人気になったそうです。
 「大松屋」は1961年(昭和36年)に東松山市に移転し、東松山で「やきとり(やきとん)」を広めていきました。また、大松屋の味噌ダレは評判となり、近辺のお店の主人から味噌ダレの作り方を教えて欲しい、という依頼が入ったそうです。ご主人は、これに快く応え、色々な人に作り方を教えたそうです。最初は作り方を教え、一緒に同じ物を作っていましたが、持ち帰った後は、その店独自の味に工夫されることがあり、この結果、色々なお店で様々な味噌ダレが発展していったようです。
 1962年(昭和37年)、かしら肉の共同購入などのため「東松山焼鳥組合」が結成されました。東松山焼鳥組合は日本初の焼き鳥店同業組合で、発足当初の組合員は若松屋、としのや、丸増、こうやんち、みゆき、大松屋、金盛の7店舗だそうです。2019年5月現在、23店舗が加盟しているそうです。有限会社大野畜産商事が東松山のやきとり屋の約70%にカシラ肉を提供しているそうですが、店によって柔らかさや大きさが違い、様々に特徴があるそうです。串の刺し方や切り方、焼き方などでその違いが生まれるそうです。
 やきとり自体にも塩味がついていますが、味噌ダレが重要です。味噌だれは、白味噌をベースに唐辛子やニンニク、ゴマ油、みりん、果物など10種類以上のスパイスをブレンドして作られることが多く、各店独自のこだわりの味をもっています。
 大松屋の味噌ダレは、当初は液体の味噌ダレだったそうですが、昭和40年代になって、サラリーマンの洋服を汚さないように粘り気のあるタレに改良したそうです。粘り気のある味噌ダレは、刷毛(はけ)で焼きとり(焼きトン)に塗り付けます。
 東松山市では「やきとり」を頼むと「豚のカシラ」が出され、肉とネギが串に刺された「ネギマ」状態の「焼きとん」が提供されます。タン、ハツなど、他の部位にもネギをはさんで串に刺すのが東松山流です。