はつ花そば 本店

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更新日:
 2015年2月5日



◎はつ花そば 本店(2014年11月3日)
 「はつ花そば」は、「自然薯蕎麦(じねんじょそば)」が有名な箱根湯本の蕎麦屋さんです。自然薯は「じねんじょ」と読み、学名「Diossorea Japonica Thunb」で、「ジャポニカ」という単語が入っていることからも分かる通り、日本原産の野生種で、「自然生」などと呼ぶこともあるようです。その名の通り、自然に山野に自生している山芋の一種です。地中深く、細く長く根を張っていることでも有名で、専用の棒を用いて、1本1本、手作業で傷つけないように手間をかけて掘られていました。現在では、栽培もできるようになったそうです。
 一般的に市販されている長芋、大和芋、イチョウ芋など「山芋」という総称で呼ばれている芋とは全く別の種類です。ナガイモと自然薯は、トロロにすると良く似ていて区別しにくいのですが、自然薯は粘り気が強いことが大きな特徴です。山芋とは粘りも風味も違います。また、消化吸収作用が良いので、胃にとてもやさしい食材です。更にミネラル(カルシウム、鉄分等)やビタミン等も豊富に含まれており、近年では疲労回復、成人病や糖尿病の予防、ムチンによるお肌の保水効果にも注目されている優良健康食材です。
 「はつ花そば」は、昭和9年(1934年)11月14日、初代店主小宮義一と妻テルが、現本店の場所に開業しましたが、紆余曲折があったようです。
 大正14年、小宮義一が24歳の時、勤めていた洋品店が潰れてしまったそうです。義一は14歳で奉公にきており、途方に暮れたようです。箱根湯元という田舎町では洋品店はやっていけないと判断したものの、何をすれば良いか分からず、試案に暮れる日々だったようです。ある日、小田原の町に出てみると、大入り満員の蕎麦屋があり、その店に入って蕎麦を食べたところ、「これなら俺にも作れるんじゃないか」と思ったようです。当時、箱根に蕎麦屋はなく、その点から行けると判断したようです。
 当初、横浜の蕎麦屋に修行に行ったものの、脚気に侵され、たった1週間で出戻ってしまったそうです。ところが義一は、横浜の職人から色々なノウハウを教えてもらい、それを書き記し、箱根で養生しながら蕎麦の修行に励んだそうです。
 退職金で買い揃えた古道具と新たに雇った職人で、早川にかかる橋のたもとに店を構えたそうです。この時、義一の父、仁三郎のもとに友人の櫻木倉太郎や旅館、古河屋の主人など、湯本の仲間が集まって義一の店の屋号を考えてくれたそうです。この時、櫻木倉太郎が提案したのが「初花」だそうです。
 この「初花」というのは、「箱根霊験躄仇討(はこねれいけんいざりのあだうち)」という、1801年に司馬芝叟(しばしそう)という人が作った浄瑠璃に由来する名前なのです。この浄瑠璃は、飯沼勝五郎という人の仇討ちを脚色したものですが、その話の元となった飯沼勝五郎も、その奥さんである初花も、箱根の鎖雲寺の境内に眠っているのだそうです。

 ちなみに、この浄瑠璃は、次のような話です。慶長(1596年〜1615年)年間、剣術指南役であった父を闇討ちにかけられた飯沼勝五郎は、仇である佐藤兄弟を追って旅をしていました。江戸まで上って行方を捜したが敵は見つからず、仙台まで行ったものの、佐藤兄弟の足取りはそこで途絶え、手詰まりとなりました。勝五郎は、そこで九十九新左衛門の剣術道場に身を寄せ、剣の腕を磨きつつ、佐藤兄弟を探すこととしました。
 九十九の道場には仙台小町と名高い美しい娘、初花がいて、いつしか初花と勝五郎は恋に落ち、やがて夫婦となりました。しかし仇の旅の道中である勝五郎は、仙台に腰を落ち着けることはなく、新たな佐藤兄弟の足取りをつかむと、大阪に向かいました。初花も、慣れ親しんだ仙台に別れを告げ、勝五郎の仇討ちの道中に同行しました。
 しかし勝五郎は病にかかり、腰から下が動かない体となってしまいます。初花は、歩けなくなった夫を手押し車に乗せ、仇討ちの旅を続けます。途中、和歌山の湯治場で勝五郎の病の養生をしました。そこで不動明王が枕元に立ち、「箱根の湯に参れ」との告げたのです。
 そこで夫婦は箱根の山に向かい、勝五郎が箱根で湯治する中、初花は勝五郎の世話のほか、神社で祈ったり、食べ物を探して山に入ったりしていました。ある日、初花が山菜を探していた時、地面に掘られた大きな穴を見つけました。猪が掘ったと思われる大きな穴の底には、かじった歯形も残る太い山芋がありました。猪が執心する山芋に興味をもって、残りを掘って、食べたところ、力がみなぎる感じがありました。
 そこで初花は、この箱根の自然薯を探しては勝五郎に与え、体が治ることを祈っていました。そんな暮らしを数年、続けた頃、箱根の街道に佐藤兄弟が現れたのです。しかし勝五郎の足腰は立たず、歯軋りする夫を見た初花は脇差しを抜き放ち、敵討ちを宣言しました。
 しかし、あっけなく佐藤兄弟の刃に倒れ、花と散っていまいます。それを見た勝五郎はついに立ち上がり、佐藤兄弟を倒し、父と妻の敵を討ったというお話です。

 このように櫻木倉太郎の提案によって、蕎麦処「はつ花」が誕生したのだそうです。その後、義一にも赤札が来て戦争に駆り出されたものの、終戦後、無事に戻ってきたため、蕎麦屋を再開したものの、蕎麦の材料である小麦粉が手に入らなくなっていたそうです。戦後の統制経済によって、米や小麦は配給になり、とても商売にするほどの小麦粉を手に入れられなくなっていたのだそうです。
 そんな時、箱根の山で掘った山芋を売る者が出てきて、これらを安く買うことができたことから、小麦粉の代わりに山芋をつなぎに使って蕎麦を打ったそうです。色々と試行錯誤をした結果、蕎麦粉と山芋、卵を混ぜ合わせ、ほんの少しの小麦粉を加えるものの、水を使わないで打った蕎麦ができあがったそうです。この時、義一が編み出した製法は現在まで守り続けられ、「自然薯蕎麦」として有名になっていったのだそうです。
 はつ花の自然薯蕎麦は、水を一切使わずに「そば粉」、「自然薯」、「卵」のみで仕上げた蕎麦です。つなぎに山芋を使用している為、時間が経っても蕎麦がのびないそうです。
 また、現在では、全国の蕎麦屋で定番メニューとなっている「山かけ蕎麦」は、もともと、この自然薯蕎麦を作る時に残った少量の摩り下ろした自然薯を蕎麦に入れたところ、美味しかった事から、はつ花そばの店主が思いついて始めたそうです。「山かけ」の名は、マグロの刺身にとろろをかける「山かけ」から採ったものだそうですが、どこでもやりそうな感じですね。本当に発祥かどうかは調べてみないと分かりません。
 蕎麦は、とても細いです。自然薯を使っているから伸びないという話ですが、小麦粉をほとんど使っていないからか、腰がありません。蕎麦の香りはしないので、上品な蕎麦、という感じですが、人によっては物足りないかもしれません。

・せいろそば(1,100円)
 蕎麦、自然薯山かけ、薬味がセットになった、はつ花一番人気の品。蕎麦の風味をお試しいただくにはこちらのお品がお薦めとのことです。
 そば粉と自然薯、そして水を一切使わずに卵で仕上げた当店のお蕎麦は、独特の豊かな甘みと蕎麦本来のお味をお楽しみいただけます。ピンと引き締まったお蕎麦と自然薯山かけをからめてお召し上がりください。



     こちらが、せいろ蕎麦です。



     これが自然薯の山かけです。

・貞女そば(950円)
 冷たいお蕎麦に自然薯の山かけをかけたのが、この貞女(ていじょ)そばです。自然薯と卵で打った蕎麦に、自然薯と卵をかけて召し上がる絶妙なマッチングだそうです。



・天ぷらそば(1,200円)
 食べ応えのある大きな海老が2尾のった、自慢の天ぷら蕎麦だそうです。天ぷらは、胡麻油と白絞油(しらしめゆ)でカラッと揚げたもので、胡麻の香りがふうわりと鼻をくすぐる逸品です。「ぷりぷりサクサク」のうちに召し上がるのが良いようです。



・はつ花そば 本店
 住所:神奈川県足柄下郡箱根町湯本635
 TEL:0460-85-8287
 営業時間:10:00〜19:00
 定休日:水曜日(祝日の場合は前日か翌日)
 駐車場:有(新館にあります)
 アクセス:箱根湯本駅から364m