アカシア

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更新日:
 2023年4月9日



◎アカシア(2022年12月11日)
 「アカシア」は新宿駅の東口、スタジオ・アルタの裏の路地裏にあるロールキャベツが有名な洋食のお店です。創業が1963年(昭和38年)6月15日という老舗のお店です。アカシアの創業者である鈴木邦三(すずきくにぞう)氏は終戦後、家業の魚屋を継いだ後、食べ物屋に転身したそうです。最初はラーメン屋をやり、その後、その店を定食屋に切り替えたそうですが、どちらのお店も繁盛したそうです。
 しかし、鈴木邦三氏は定食屋で満足せず、1963年(昭和38年)6月15日に洋食屋であるレストラン「アカシア」を開業しました。当時は洋食屋の黄金期で、東京では次々に新しい洋食屋がオープンしていた時代だそうです。鈴木邦三氏はそういうお店を食べ歩いて研究し、独学で洋食屋「アカシア」をオープンしたそうです。
 しかしながら、この業態転換は順調ではなかったそうです。東京オリンピックの開催を目前にして、外国人観光客の増加や景気の上向きを見据えた鈴木邦三氏は、洋食店アカシアを周りの店より少し高級な店と位置付けてオープンさせたそうですが、ラーメン屋や定食屋時代と比べてお客さんはガクッと減ってしまったそうです。
 開店当初のアカシアは、ステーキや海老フライを中心とする「高級洋食店」だったそうです。しかし価格設定の高さが災いしたのか、2〜3ヶ月は、お客さんが少なかったそうです。そんな時、鈴木邦三氏にあるアイデアが閃いたそうです。それが、その後から現在に至るまでアカシアの看板メニューとして多くの人々に愛され続けているロールキャベツだそうです。
 実は鈴木邦三氏にとってロールキャベツは、子供の頃から慣れ親しんだ「家庭の味」だったそうです。ロールキャベツは明治時代に日本に伝わったそうですが、元々は「シチュー」料理だそうです。明治28年(1895年)冬に発行された婦人雑誌に「ロールキャベツ」の作り方として「ルーでシチューにする料理方法」が紹介されているそうです。
 鈴木邦三氏のお母さんは、朝、ロールキャベツを作って、そのまま仕事に出かけたそうです。鈴木邦三氏は、栄一さん、あい子さん、邦三氏の3兄弟だそうですが、子供達は夜、両親の帰りを待ちながらこれを温め直してご飯と一緒に食べたそうです。一皿で肉と野菜がバランスよく摂れて、しかもご飯によく合う味付け、さらに身も心も温まる鈴木家の家庭料理は、まさに母の愛であり、そしてそれがアカシアの経営危機を救うことになりました。
 鈴木邦三氏は、このロールキャベツを、ライスと組み合わせたセット、つまり少年時代に自分が家で食べていたのと同じシンプルなスタイルで提供しました。この時のライスは、東京の洋食店としては珍しく、皿ではなく茶碗で提供されたそうです。これも、もしかしたら子供の頃から慣れ親しんだ家庭料理へのオマージュだったのかもしれません。
 高級洋食店だったはずのアカシアに突如、登場したロールキャベツとライスのセットは、120円という安値で提供されたそうです。この金額は当時のタクシーの初乗り料金と同じだったそうです。ちなみにアカシアのロールキャベツは、正確には「ロールキャベツシチュー」という名前で提供されています。その名の通り、とろりとしたクリームシチュー風の見た目です。
 鈴木邦三氏の孫にあたり、現在の店主、三代目である鈴木祥祐(すずきしょうすけ)氏によると、肉ダネは牛豚の合挽き肉に玉ねぎと少量のニンニクを加えて、塩、コショウで味付けしているそうです。キャベツは球の中心近く、中葉、外葉と大きさが異なる3枚の葉を小、中、大の順番できっちりと巻くそうです。大鍋に隙間なくロールキャベツを並べてチキンブイヨンで2時間、煮込み、1時間冷まして味を浸透させてからまた2時間煮込むそうです。キャベツは型崩れすることなく柔らかく仕上がり、牛、豚、チキン、野菜の旨味が凝縮したスープも同時に完成します。そのスープにとろみとコクを与える小麦粉のルーには、バターではなくラードが使われるそうです。これは創業者、鈴木邦三氏の母の作り方そのままだそうです。
 レシピは創業以来、基本的には変わっていないそうですが、近年になって煮込む際にローレルを2枚だけ加えるようになったそうです。常連客にも変化を気付かれないようにしつつ細かいアップデートは欠かさないのが、老舗と言われながら続いているお店の秘密なのでしょう。また、レシピは変わってないものの、肉は昔に比べて格段に美味しくなったそうです。また、昔から馴染みの肉屋さんが、時々、在庫の関係とかで和牛のすごくいい肉を持ってくる時もあり、それで作ると確かに抜群に美味しいそうです。運のいいお客さんは、時に普段よりさらに「抜群」なロールキャベツに出会えることがあるようです。ちなみに新宿本店では1日に約250食の注文があり、1日に2Lくらいの大きさのキャベツ、約60個強が使われているそうです。
 「アカシア」ではロールキャベツシチューだけでなく、「極辛カレー」も有名です。「極辛カレー」は、今から30年ほど前に二代目の鈴木康太郎(すずきこうたろう)氏によって産み出されました。鈴木康太郎氏は、創業者である鈴木邦三氏の息子で現在の3代目にあたる鈴木祥祐氏のお父さんです。
 鈴木祥祐氏はインドを旅行し、カレーに衝撃を受けたそうです。そこで、帰国してすぐに独学でインド風のチキンカレーを作り始めたそうです。当時は本場のレシピが手に入らなかったため、ありったけのスパイス17種類をああでもないこうでもないと組み合わせてオリジナルのガラムマサラ的なものを完成させ、できあがった一品だそうです。「極辛(ごくから)」という命名も、「激辛」ではなく、「美味い辛さを極める」という意味で名付けられたそうです。美味しい辛口のカレーで、骨付きチキンが2本、入っています。
 「アカシア」の歴史には3代目、鈴木祥祐氏の叔父である、鈴木邦彦も大きくかかわっているそうです。鈴木邦彦氏は創業者、鈴木邦三氏の息子で、二代目の鈴木康太郎氏の弟です。鈴木邦彦氏は大手ハムメーカーに就職した後、マイスターの資格を得るために本場ドイツに渡りました。鈴木邦彦氏がドイツに居を構えながら時折、帰国してアカシアに伝えたのが本場のハムやソーセージだそうです。他にもスパイシーなチキンソーセージやシンケン、リオナ、ズルチェ、レバーケーゼといったドイツ本場の味わいを次々とアカシアにもたらしました。一時期は、それらを日替わりで銀盆に何種類も並べて客席を回るというプレゼンテーションも行われたそうです。さらに鈴木邦彦氏はドイツからの輸入ルートを作り、樽詰のドイツビールを導入できるようにしたそうです。
 お店はモダンなアールデコ調のレトロな外観の建物ですが、路地の幅が狭く、建物全体を写真に収めることができません。店内も昭和レトロな落ち着いた雰囲気ですが、什器や飾りも、大工さんを雇って工房で作ってもらったものが多く、ここにしかない一品物が多いそうです。
 ちなみに店名の「アカシア」は、創業者である鈴木邦三氏の兄、栄一さんの思いがあるそうです。鈴木栄一さんは第2次世界大戦中、中国東北部に従軍していた際、負傷して入院したそうです。この時、病院の窓から白いきれいなアカシアの花を見て、帰ったらアカシアの名前をつけた店をやりたいと思ったそうです。終戦後に帰国した栄一さんは、実家がフルーツを神田市場に納めていた縁で、フルーツパーラーを開店したそうです。その頃、弟の邦三さんがコックとして仕事を手伝い始め、洋食の調理を身につけていったそうです。その結果、鈴木邦三氏が洋食屋をオープンする際、店名を「アカシア」としたそうです。2023年4月現在、「アカシア」は新宿本店の他に羽田空港にもお店を構えています。













・極辛カレーライス





・ロールキャベツシチュー



・アカシア 新宿本店
 住所:東京都新宿区新宿3-22-10
 TEL:03-3354-7511
 営業時間:11:00〜19:30
 定休日:無
 駐車場:無
 アクセス:JR、新宿駅、東口から徒歩約3分
 カード:可(Diners、VISA、Master、JCB、AMEX)
 席数:40席
 オープン日:1963年(昭和38年)6月